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いた。地方の時代で地域活性化が叫ばれていること及び中高年者に旅行志向が強い実情を認識したうえで、M社が注目したのは、バブル経済の絶頂期に競って全国の自治体が建設した、町や村の所有する宿泊施設、いわゆる「公共の宿」である。日本全国に相当な数の公共の宿が存在するにもかかわらず、その存在は一般に知られておらず、そのほとんどが赤字経営を余儀なくされている。宿泊施設経営の経験やノウハウを持たず、宿泊客の誘致についてもよく分からない、旅行業者に送客を依頼しても、1泊2食で5、6千円である安い宿泊費の10%の送客手数料では採算が合わず、どこも取り上げてくれる筈がない。仕方なく限られた予算の中で細々と雑誌等に宣伝をしているだけだから予約の状況も寂しい限りの状況である。もともとは町おこし・村おこしのために建設された貴重な公共の資産であり、場所的には多少不便ではあるが、施設そのものは小規模ながらなかなか立派なものも多いのである。M社はここに着目し、これを何とかビジネスに結び付けたいと考えて以下のような独自のサービスシステムを開発した。
まず、公共の宿を有する自治体に、M社のサービスシステムの趣旨を添えたアンケートを実施し、その実態を把握することから始めた。いずれの町や村も、宿泊客を増加させ保有する宿泊施設の経営を何とか軌道に乗せたいとの意志が強いことを把握したうえで、全国の公共の宿の総合案内センターとして、公共の宿の宣伝・販売促進を行い予約を受け付ける業務の受託を受けるための、公共の宿専門「ふるさと案内センター」を設置したのである。各自治体との案内センター会員の契約を進めるため、計画的に自治体に対する説明会を実施し多くの自治体を訪れたが、当初は、宣伝活動や宿泊客の増加に対する希望は強いものの、予算がないとか提携や契約の経験がない等、お堅いお役所体質・古い発想のため案内センターの会員になることを渋る町村が多かった。M社が小規模旅行業者であることへの警戒心もあったと思われる。M社は予定した会員数に届かなかったものの、説明会での自治体担当者との感触や、町おこし・村おこしへの協力に取り組もうとするM社の姿勢に賛同する支援者との出合いもあり、勇気を持って果敢にこのシステムの実行に取り掛かった。フリーダイヤルを設置し、研究されたチラシを数万部作って大量に新聞に折り込むと同時に、各会員だけでなく全国各地の公共の宿のフロントにこのチラシを置き、できる限り多勢の顧客の目に触れるよう工夫した。
また、M社の働きかけで、自治体の町づくり・村づくりを支援する「ふるさと案内センター」として四大新聞のいずれもが大きく記事として掲載してくれた後は、即座に電話応対に困るほどの大きな反響があり、一般住民の共鳴や支持はしだいに大きくなり、送客面でも目立った成果をあげることにつながった。その反響の大きさに、当初、契約を渋っていた自治体の反応も変わり会員契約を希望するところが増えだしたのである。M社は、次ぎに各公共の宿の予算の少なさをフォローするため、インターネットにホームページを開設、各地の公共の宿の宣伝・広報を無料で掲載することを始めた。インターネットの活用による宣伝効果や若い世代の開拓に乗り出し、その反応を楽しみにしている。一方、新聞等により反応を示した一般住民約3,000名を対象に会員制度を作り、顧客をふるさと案内センターの会員にして、新しい公共の宿の紹介や公共の宿周辺の観光情報を提供したり、会員相互めコミュニケーションを図るための「会報」を編集し毎月送付するサービスを開始した。「ふるさと案内センター」を核にして、顧客と自治体の双方からの収入源を確保することに成功したのである。顧客にとっては低価格で信用できる公共の宿が予約できる、自治体にとっては混み合わない平日客が確保で

 

 

 

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